春野菜と漢方
- 女性の悩み
ご近所の方が
「26歳になる娘のことで相談です。今朝から脇腹の辺に違和感があり、息苦しいと言っています。朝一番で病院に行き、神経痛との診断を受け、湿布が処方されました。しかし今は起きた時より具合が悪くなり、ソファーに横になっています。熱っぽさも訴えますが、体温を測っても平熱です。会社に行っても大丈夫でしょうか? 娘と電話で話してみてください」
と、携帯電話を握りしめ、相談に見えました。
そこで、早速LINEのビデオ通話で娘さんとお話ししました。
顔色は、ほてりがみられ、熱っぽそうでした。
またお顔全体がいつもより浮腫んだように見え、しかも手も腫れぼったく、握りにくいと言っています。
身体もふわふわして気持ち悪い。病院から帰ってきたら、さらに脇腹の違和感も強くなっている気がするとのことでした。
問診の結果「苓桂朮甘湯」と考えました。
立ち眩みやめまい、または動悸がひどく、のぼせて頭痛がし、顔面がやや紅潮したり、あるいは貧血し、排尿回数多く、尿量減少して口唇部が渇くもの
LINE通話中、顔を搔いているのが気になり
「お顔に痒みがありますか?」
と尋ねたところ
「顔もですが、身体全体が朝より痒くなってきた」
と言われました。そこで
「花粉症などのアレルギーはありますか?」
と尋ねてみると、
「花粉症は少しありますが、薬を飲むほどではありません。今日は鼻の症状はありませんが、いつになく痒いです」
とのこと。
かゆみの原因がとても気になったので
「今朝は何を召し上がりましたか?」
と尋ねてみると、
「病院から帰って、ご飯とわらびの卵とじを食べました」
と言われました。さらに
「昨日、わらびを沢山いただいたので、昨夜の夕食もわらびづくしでした」
と話されました。
体調不良はおそらくわらびによって脚気状態になったことが原因と考えました。
わらびなどアクのある野菜は、皮膚が痒くなったりすることがあります。わらびは山菜の中でも特にアクが強い野菜です。
わらびを大量に食べ過ぎると、体内でビタミンB1が破壊されることにより、脚気と同じような状態になってしまいます。さらに重症化すると心不全になることもあります。
脚気の状態
①食欲不振
②だるさ
③浮腫み
④動悸
⑤息切れ
⑥麻痺
この方には「苓桂朮甘湯」にプラスして、ビタミンB1の錠剤を飲んでいただきました。そして、症状が改善しないようなら、再度病院に行くよう話しました。
その1時間後、お母さまからお電話があり
「漢方薬一服とビタミンの錠剤で呼吸も正常になり、かなり楽になったので、本人もそのまま様子を見たいと言っています。身体のかゆみも治まったようです」
と言われました。
ところで薬膳の考え方では、春は五味の中でも、苦みと甘みのある食材がお勧めです。
苦みは、身体の熱を冷ましたり、水分を排出する効果があります。
甘みは、筋肉の緊張を緩め、痛みをやわらげたり、胃腸の働きを良くしたりします。
苦みのある野菜
⇒ うど・たけのこ・タラの芽・フキノトウ・わらび
甘みのある野菜
⇒ キャベツ・やまいも
それぞれの季節の旬の食べ物が体に良いとはいうものの、やはり食べ過ぎは禁物です。
これからの季節、様々な春野菜が楽しめます。春野菜を上手に取り入れて、食卓を彩り豊かにして、健康な毎日を送りましょう。