お悩み別漢方

足のつりと痛みに『芍薬甘草湯』?

  • その他の症状

 

処方箋調剤の監査時だけでなく、漢方相談でも重宝しているのが「お薬手帳」です。「お薬手帳」を拝見すれば、その人の過去から今に至るまでの体調が、おおよそ推測できるからです。ですから毎日、おひとりおひとり出来る限り丁寧に拝見させていただいています。
 

「お薬手帳」に記載されている漢方薬の中でよく見かけるが「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」です。

 

ほとんどが「足のつり」で処方されています。漢方薬は長く飲んでジワジワ効いてくるイメージが多い中で、「芍薬甘草湯」は、こむら返りなどの痛みに頓服薬としての即効性があるため、効果がすぐに実感できる漢方薬の1つです。

 

芍薬甘草湯

「芍薬甘草湯」は、昔から足のつりや筋肉の痛み、痙攣(けいれん)に効果があると言われています。
中国の医学書である「傷寒論」には、飲むと脚が弱いのが癒えて、杖が不要になるという別名「去杖湯(きょじょうとう)」も記載されています。

芍薬甘草湯

組成

芍薬(しゃくやく)
⇒筋肉や腱の異常緊張を弛緩
甘草(かんぞう)
⇒種々の急迫症状を緩和弛緩

このたった2種類の生薬で、筋の拘急・攣急を緩め、痛みをとります。手足の疼痛、胆石や腎結石の発作疼痛、胃腸痙攣、排尿痛にも応用される鎮痛剤です。

 

 

「芍薬甘草湯」正しく使えていますか?

先月、90歳代のおじいさんが、家族に付き添われて初めて来局しました。以前から脊柱管狭窄症を患い腰痛があったのですが、腰だけでなく身体全体の重だるさがとれる漢方薬が欲しいということでした。

身体全体の重だるさ

早速持参していた「お薬手帳」を拝見しました。血圧薬が3種類、糖尿病薬が2種類、利尿剤、鎮痛剤、前立腺肥大治療薬など全部で15種類も毎日服用していました。「お薬手帳」から、「むくみとだるさがあるので心不全では?」とまず考えましたが、来局直前に内科医より「心臓は特に問題なく、ややむくみはあるものの、大事には至っていないので様子をみるように」と言われたとの事でした。でも異様なだるさがあって心配になり来局したのでした。
処方薬以外に栄養剤や健康食品を飲んでいないか尋ねたところ、そういったものは一切飲んでいないとのお答えでした。
とりあえず一過性のむくみによるものと判断し、むくみをとる漢方薬をお渡ししようとした時に「そういえばちょっと前よりふくらはぎが痛いので、漢方薬を毎日服用しているが一緒に飲んでよいか?」と聞かれました。グランドゴルフで一緒の友人が、足のつりの予防で漢方薬を服用してみたら成績もよくなったので、ご自分も服用されているそうです。「もしかしてその漢方薬は、芍薬甘草湯ですか?」と尋ねたところ、その通りでした。
 

「芍薬甘草湯」は、人によって、だるさや、むくみ、動悸等の副作用があることをお話し、早速服用を中止してもらったことがありました。
 

足のつりを漢方で考える

足の筋肉の異常は大きく2種類に分類されます。

1. 肝血虚(かんけつきょ)
⇒筋肉の栄養失調状態
2. 瘀血(おけつ)
⇒血行不良

 

まずこれらの根本原因を見直すことで、足のつりが繰り返し起こりにくくなります。
「芍薬甘草湯」は鎮痛薬なので、服用した時には症状が治まっても、繰り返し起こることが多いものです。足のつりでお困りの方、「芍薬甘草湯」を飲んでも足のつりが治らない方は、是非ご相談ください。

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この記事の執筆者

新海薬局

薬剤師 丹沢 仁美
Hitomi Tanzawa

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