悪寒・発熱に葛根湯?
- その他の症状
漢方薬も例外ではありません。葛根湯・麻杏甘石湯・麦門冬湯などの漢方の風邪薬も、コロナやインフルエンザにも使われるため品薄です。
ところで、漢方の風邪薬で一番有名なのは、葛根湯ですが、私自身風邪で服用したことはありません。それは私が葛根湯の「証」に当てはまらないからです。
葛根湯は、中国後漢時代の張仲景の書いた「傷寒論」という医学書に載っています。「傷寒論」の序文は『迷信深い人々が医術を信じず、また医療人も研究不足で、疫病の流行時に多くの犠牲者が出た』と嘆くことから始まります。この序文は、今のコロナ禍にも通じそうですね。
「傷寒論」によれば、急に発熱する病を、「傷寒病」と呼びます。現代の医学では、風邪・インフルエンザ・腸チフス・マラリアなどの感染症も含まれます。
傷寒病
時期によって次の6つに分類されます。病邪が身体の表面から侵入し、徐々に身体内部に犯していく過程によって病態を分けて考えます。
1. 太陽病
⇒ 体表面に病邪がある
2. 少陽病
⇒ 病邪が体の内側に進んだ状態
3. 陽明病
⇒ 胃腸に炎症を起こす
4. 太陰病
⇒ 胃腸の冷え
5. 少陰病
⇒ 冷えがさらに進み腎に及ぶ
6. 厥陰病
⇒ 生命力が尽きようとしている
傷寒病初期の太陽病では、発熱して脈が浮き、頭痛がしてうなじが強張り、悪寒がする症状がみられます。
葛根湯
<葛根湯を選ぶポイント>
1. 風邪のひきはじめ
2. 寒気と熱感が同時にある
3. 汗が無い状態
4. うなじから背中にかけてコリがある
しかし、「風邪の引き初めに葛根湯」とCMで宣伝されてたこともあるせいか、風邪なら「葛根湯」と思っている方が多いようです。
○風邪予防
○風邪っぽい
○喉が痛い
○鼻水が出る
「証」を考えずに、この4つの理由だけで「葛根湯」を服用するのは間違いです。特にコロナ禍以降、コロナ予防で葛根湯の「証」もないのに服用している方が多く、心配になります。
葛根湯の「証」
「証」が違うと、薬が効かないばかりか、かえって症状を悪化させることも。
一例ですが、身体に汗を掻いているときに服用し、汗が止まらなくなり、かえって体力が落ちてしまった方がいました。
ちなみに、私は、悪寒と発熱が同時にあり、かつ汗も掻いているときに服用する「桂枝湯」や、悪寒と発熱が交互に来る(往来寒熱)場合の「小柴胡湯」を常備しています。人によって風邪の初期に服用すべき薬は異なり、柴胡桂枝湯・小建中湯.参蘇飲.真武湯など様々です。
最近の傾向
最近は、地球温暖化の影響かもしれませんが「傷寒」ではなく「温病(うんびょう)」の人が増えています。「温病」とは、最初から寒気がなく熱症状で、喉が痛くなる症状です。「温病」の風邪薬として銀翹散を常備している方も多いです。
漢方薬は「証」に合ったものを選ぶことが重要です。風邪を引いたとき、もう一度本当に葛根湯の証であるかご自分の症状を観察してみましょう。そして貴方に合った常備薬を備えましょう。