お悩み別漢方

五月病

  • その他の症状

何年か前のGW明けに、ママ友と二人だけでランチをした時のことです。ママ友のお子さんは、その年の春に東京の有名大学に合格されました。ママ友は、連休に初めて里帰りしてきたわが子との様子をフェイスブックに上げていました。今回のランチではその楽しい話を聞けるものと楽しみにしていました。
ところが、ママ友はランチ当日待ち合わせの時間になってもなかなか現れず、やっと来たと思ったら、私もびっくりするくらい元気がありませんでした。
「休み明けに、子供が大学に戻るので、甲府駅まで車で送って行き、姿が見えなくなった瞬間から涙があふれてきた。メンタルをやられてしまったので、家に引きこもっていたい。今日もドタキャンしたいところだったが、何とか元気を出して来た感じ」と話してくれました。
私が五月病だから、すぐ元通りになるよと慰めたところ、
ママ友は「元通りってことは、子供がいなくても寂しくないってこと?そんな日は来ないと思う」と、慰めもかえって逆効果でした。

 

五月病とは

私はとっさに「五月病」と言いましたが、これは正式な病名ではありません。
新しい環境の変化についていけず、だるさ、疲れやすさ、無気力、食欲不振、不眠などの症状が出ることがあります。5月に起きやすいので5月病と呼ばれています。
確かにGW明けは、だるさや精神的落ち込み、食欲不振などを訴える患者さんが少なくありません。なかでも、受験や就職など大きな目標を達成したことで、燃え尽き症候群のような状態になっている人は注意が必要です。
5月病は放っておくとうつ病などに進行することもあるので早めの対応が必要です。

 

季節の変わり目に注意

季節の変わり目は、身体が変化に対応するため、いつもより多くのエネルギーを消耗します。
暦の上では季節の変わり目のことを「土用」と言います。春夏秋冬それぞれ、立春・立夏・立春・立冬の前18日間が、「土用」の時期です。春は4月の下旬からGW明けまでが「土用」です。
漢方では「土」は胃腸と関係があります。「土用」の時期にしっかり、胃腸を整え、いつもより多くのエネルギーを作る必要があるとされます。ところが、寒暖差などで胃腸の機能が低下し、そこから全身の不調につながることが多いのです。

 

ママ友の症例

実際、彼女は食欲が全くなく、ため息も多く、顔色も悪く、今にも号泣しそうに小刻みに手や顔が揺れていました。見るにみかねてランチ中に、手持ちの補中益気湯1包をその場で少しずつ何回かに分けて服用させました。
帰り際「こんなに、食べられたのは久しぶり。ちょっと元気になった」と言っていたので、補中益気湯が効いたと思いました。

 

五月病になりそうなら
1 継続できる軽めの運動を取り入れる
2 バランスの良い食事を心がける
3 睡眠時間の確保
4 規則正しい生活リズムを心掛ける
5 人と話す、相談する

 

漢方で早めの対処を

もしも生活環境が変わって、気分が乗らない・やる気がしない・食べたくない等症状がある場合は、漢方薬など早めの対処が必要です。体に合った漢方は心のバランスも整えてくれます。五月病は六月になっても、治らない人もいらっしゃいます。ぜひ早めにご相談ください。

 

薬剤師のひとり言

私は以前、何を悩んでいるかを尋ねることは少なく、その方の体調や症状に応じた漢方を考えていましたが、この経験から相談者の心の悩みに寄り添いながら、考えることも必要な場合があることに気づきました。

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この記事の執筆者

新海薬局

薬剤師 丹沢 仁美
Hitomi Tanzawa

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